CELLADiANT interview 02
美容先進国・韓国のすがた
「 マーケティングの重要性 」
韓国の最新トレンドを作る第一人者
「Eight M (エイト・エム)」
キム・ヨンジュ代表
「Eight M (エイト・エム)」キム・ヨンジュ代表

韓国トップの代表者による
セラディアントを徹底解説

CELLADiANT
interview
03

美容先進国・韓国のすがた
〜 マーケティングの重要性〜

ここまで、二人の専門家(パク・ジュウさん/イ・ミョンソプさん)へのインタビューによって、韓国コスメは2000年代の初め韓流の人気とともに大ヒット、世界のトレンドとなったことがわかりました。このことは、韓国の市場成長や日本への輸出増加など数字で見るとさらに明らかです。同時に、韓国は自国内の市場規模が大きくないために、海外でのビジネス展開が必須であることもよくわかります。

韓国IMF危機後の1998年、韓国第十五代大統領に就任した金大中(キム・デジュン)氏は、国内の文化コンテンツを積極的に海外市場で展開することを打ち出します。そうして、韓流ドラマに始まりK-ポップなどのエンターテインメントが海外で人気を呼ぶと、俳優や化粧品、ファッションにも注目が及び、韓国政府は成長が見込める化粧品産業を国家レベルでバックアップをしていきます。
※この原稿内で「最近」あるいは「このごろ」と表現しているのは、2023年度の始まり(春・夏)ごろです。

ビューティーの世界市場で成功するためには、
誰もやらない
創造的マーケティングが最も重要です。

ビューティーの世界市場で
成功するためには、
誰もやらない
創造的マーケティングが
最も重要です。

profileキム・ヨンジュ代表
韓国の最新トレンドを作る第一人者「Eight M(エイト・エム)」

 「Eight M(エイト・エム)」は、化粧品を始めとする商品のマーケティング、コンテンツ制作、MCN事業など、さまざまなサービスを行う総合グローバルメディアカンパニー。

※MCN事業 マルチチャンネル ネットワーク事業のこと。複数の YouTube チャンネルと提携し、視聴者の開拓、コンテンツのプログラミング、クリエイターとのコラボレーション、デジタル著作権管理、収益化、営業など、YouTuberをサポートする。事業スタイルは、年々さまざまに変化している。 

「Eight M (エイト・エム)」キム・ヨンジュ代表

キム・ヨンジュさんは、その代表を務めるほかにもK-beautyの選定評価委員や、韓国女性ベンチャー協会のメンター(指導者。助言者)や大学での講義、各種審査委員などを歴任。韓国の最新トレンドを作り上げてきた第一人者です。

K-ポップ、アイドル、俳優たちのきれいな肌は
韓国文化の代表的なものの一つに。

 韓国の美容はかつて中国の影響を受け、その後スキンケアが有名になった日本からの影響を受け、韓国自身がビューティーに強い関心を持ち、独自に研究を始めて発展してきました。研究の内容は、中国の昔からの化粧文化と韓国のそれを合わせて両方の長所をミックスすることでした。二つの国の影響と自らの意志、研究、これが現在のK-ビューティーの歴史です。

なぜこれほど成長し有名になったか?
透明で健康的、明るい韓国人の肌は、実は世界中の憧れ。

K-ポップや芸能人が注目されると、登場する誰もがとてもきれいだから、彼らに続いていかなければとブームになったのが、韓国の整形化や化粧品だと思います。
また、ビューティークリエイターたちの存在も小さくありません。以前、私はビューティークリエイターたちのMC会社(進行のための会社)でも仕事をしていたことがありますが、彼女たちが世界中に紹介をしてくれたおかげで、韓国コスメはより広く知られるようになったことをよく知っています。
加えて、K-ビューティーが大人気になったのには、創造的なマーケティングが上手だったことがあげられます。

 たとえば、誰もが認める「韓流ドラマ」の影響。
 それから、歌手たちがお化粧をする様子をSNSで載せたこと。さらに、テレビドラマの中に化粧品を使うシーンをいれたこと。広告ではなくコンテンツを活用したことでマーケティングがうまくいったと思います。彼女、彼らのような肌になりたいと思うファンによって、自然にK-ビューティーが世界中の関心になったのです。
 透明で健康的、明るい韓国人の肌は、実は世界中の憧れでした。同時に、きれいな「水光肌」のメークはグローバル市場でのトレンドにもなっていきましたから、まさに韓国の化粧品と合致して人気が出ました。かわいいパッケージも韓国コスメの特長として有名になりました。やがて、スキンケアのインフルエンサーたちが韓国コスメをレビューして薦めるものが、各国で売れるようになりました。
 
 韓国人は、自分が何をすれば肌をきれいにすることができるか、もともと肌管理にとても強い関心があります。韓国の化粧品ブランドは、そうした意識の高い国民に合わせて良い成分や原料を求めて開発をしたので、高いクオリティを誇っています。すると、日本の化粧品が好きだったマニアたちも韓国コスメに乗り換えるようになった、という流れもでてきました。
韓国コスメはコスパもいいので、「ネイリャーリパブリック(世界中の人々を魅了し続ける韓国の自然派スキンケアブランド)」に始まって、海外ではまず東南アジアなどで、ものすごく売れました。コスパもそうですが、原料を見ても良いものを使っていることはわかりますから、クオリティに対して価格が手ごろ。これも韓国コスメがものすごいスピードで成長した理由です。

憧れは、透明で健康的な明るい「水光肌」

韓国の化粧品は、すべてグローバルです。全世界のトレンドを見ながら、成分やデザインなどそれぞれの国を調査したうえで、その国が探しているものに合わせて開発しています。その時々で変わるトレンドにも合わせ、韓国を基本にグローバル市場に合わせて開発していきます。 自国の化粧品メーカーが海外進出をするための特別ルート、というのはありません。各ブランドが電波を通して自社製品を紹介したり、インフルエンサーたちが紹介して噂になって広まったり、東南アジアのLAZADA、アマゾンに出して広まったりしてきました。人気ブランドは人気のユーチューバーやインフルエンサーのリストを持っていて、その人たちと相互に連絡をとってマーケティングを進めています。マレーシアなど東南アジアの場合はフランチャイズで代理店として進めます。

※K-ビューティーの間接広告の一例[PPL:プロダクト・プレイスメント] テレビドラマの中で化粧品を使う場面を作り、販促目的の化粧品を使用。「星から来たあなた」(2013~2014年)で主人公のチョンソ=イが、「太陽の末裔」(2016年)でも主人公のカンモヨンとソンヘギュが、それぞれ売出したいリップをドラマ内で使用。コスメの入り口としてのリップを印象づけた。 

整形美から自然美へ。
ビューティーは「健康と自分のため」に。

コロナ禍から「健康と自分のためにお金を使う」

韓国は、お金持ちとそうでない人のあいだに激しい差があります。財産がなければ、お金持ちになるのは難しい。
だから、最近のMZ世代(1981~2010年の間に生まれた人たちのこと。「デジタルネイティブ」とも呼ばれる)は、自分のためにお金を使いますし、コロナ禍を体験してさらに「健康と自分のため」にお金を使うことを考え始めました。そのため、さらにビューティーへの関心が強くなったと思います。

韓国の言葉に「テンジャン女(味噌女)」というものがあります。ブランド品で身を飾る女性とか、西洋気どりをして朝はカフェでブランチをするような女性を指し、女の人を悪く言う言葉です。それほど韓国女性は男性をナンパすることにも慣れていますし、整形をする人も多かったのです。
 けれども、いま整形美に限界を感じて「自然美」へと移行し始めている人たちが多くなりました。それだけ化粧品やスキンケアにとても気を使うようになってきています。そこにビューティークリエイターたちが現れてアドバイスを行うようになり、お化粧だけで整形級にきれいになるのが流行りました。

それらのことが重なって、2010年ごろから国内でも化粧品の売り上げが伸びました。整形もユーチューブで人気になりましたが、お化粧だけで芸能人のようになれるコンテンツもまたユーチューブでブームになりました。

韓国には「見た目主義」とでもいうべき基準が存在します。

 入社試験の面接でも美人が採用されますし、男性の場合でもかっこいい人が採用されると言ってもいいでしょう。こうした基準に反発する人も少なくはないのですが、風潮として存在するのが現実です。

韓国で整形が流行ったのも、この「見た目主義」があったからと言えます。同様に「これが有名!」と聞くと誰もが買います(笑い)。韓国人はノリがいいから、エナジーも強く、多才な人が多いから人よりも一歩前に出る国民性があるように思います。

韓国では、男性のビューティーブーム!
そこにもビューティークリエイターとユーチューバーの存在。

 MZ世代の男子は、肌の管理にも熱心です。
最近の若い韓国人男性に、化粧をしていない人はほぼいません。サンクリ―ムをベースにカラー系をしっとりさせるものが基本です。アイブロウも多くの若い男性が使っています。
 男性もやはり「肌、きれいだね」と言われるように、肌色とツヤを意識していると話します。
今日も食事のとき、横の席の男性がメークをしていましたが、あまりにも濃いメークだったので、お願いだからナチュラルにして(笑い)、と思いました。男性は汗の量も多いので、濃いメークだと崩れてしまうのです。

男性化粧品のマーケティングも、女性化粧品の場合と一緒で、インフルエンサーの影響・効果が最も強く現れますので利益も大きくなっています。ショップによっては、新製品が出るころに「YouTuberが推薦!」などのステッカーが貼ってあったりします。そして、最近とくに、ビューティークリエイターの人気が大きくなりました。なぜなら、化粧品を細かく分析して成分や効果を教えてくれるからです。

ビーガンから、ウェルビーイングへ。
トレンドは「ナチュラル」。

トレンドは、いま「ビーガン化粧品」

わたしにとっての化粧品は、自分を守ってくれる一つの栄養です。お化粧をしないと老けてしまいそうです(笑)。
肌が良くなりながらツヤがあること。化粧品は自分を飾る道具ですが、肌を健康にすると同時に、気持ちも健康にして、印象を若くします。
だから、成分が良くなければならないのです。それだけ最近の化粧品は、とても性能がよくなりました。
韓国人が好きな韓国コスメの基準は、最近は自分に合う成分の化粧品です。自分の肌に合うようにカスタマイズすることが最近は流行っています。基本的な成分と容器は同じですが、そこに自分がほしい成分を追加するようになっています。それらの成分はすべて天然成分なので、アトピーの人でも使えます。
  韓国内で化粧品のマーケティングをしていくことの難しさは、あまりにもたくさんのブランドがあるために競争が激しいことです。他社と同じことをしていては絶対に売れません。大企業だから売れるわけではなく、逆に、安くていい製品なら小さい会社でもマーケティング次第でかなり売れます。
 たとえば、20歳の男性が、コエックスモールでどんな言葉をよく使っているか? 30代女性がいまどんなものを買っているかもわかる時代になりましたから、それらの情報をきちんと把握してマーケティングをすることが大事です。

韓国は創造的マーケティングを探すのに、革新的です。とくにビューティーマーケティングをするには、いつも他の人がやらないこと、たくさんのアイディアがないといけないと、私は考えています。
いまトレンドは、ビーガン化粧品です。

韓国コスメは革新的であることが最も重要。
その次に効果、トレンド、コスパが求められる。

革新的であるとは、まず、お米など自然由来成分を使用していること。2番目に、アンチエイジングなど高いクオリティの機能性があること。3番目に、軽くて保湿力の高いテクスチャーであること。とくにエッセンス、サンクリームなどは早い保湿力とテクスチャーが求められます。最後に、世の中にない新しいカテゴリーを創造すること。シートマスクやリップスリーピングマスクが、これに相当します。

多くの人に頼りにされ愛され人気が出る商品開発として成功する 3つのポイント

 ビーガンのあとのキーワードは、「ウェルビーイング」です。
自分のことを大切にするMZ世代は菜食主義の人も増えて、家で食事を作るより、外で健康的な食事を買う人が増えてきました。また、そういうレストランも増えていますし、健康食品のお店もとても多くなりました。

※ビーガン 完全菜食主義者。卵や乳製品を含む動物性食品をいっさい口にしない。
※ウェルビーイング 健康・幸福・福祉……、心身ともに満たされている良い状態。

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